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電気で走るクルマのひみつ~EV・PHEV~

電気で走るクルマのひみつ~EV・PHEV~

トコトンやさしい電気自動車の本』に続き、昨年ノーベル賞受賞の吉野彰博士(以下敬称略)が実用化に貢献したLiB(リチウムイオンバッテリー)について勉強してみようと思う。EVについて勉強すると私の苦手な電気と化学を避けて通れないことがよくわかる。これはクルマがもはや20世紀までのそれとは全く異なった乗り物になったことを示している。極端に言えば、ツナギを着て油まみれで組み立てるクルマ像から白衣を着て開発するイメージ。


つなぎから白衣へ1
世界一速い車をつくった男 本田宗一郎』より
つなぎから白衣へ2
『電気で走るクルマのひみつ』より
ツナギから白衣へ

お金はいくらでも銀行(紙幣や硬貨といった実体はあるものの実際にはデータとして仮想空間上の“サーバ”)に貯められて、いつでもどこでも自由に出し入れすることが出来る。同じように人々の生活に便利で不可欠な電気は、実際に役立つ電気エネルギー(電力)の形では貯めることはできない。なぜなら電気エネルギーは電子が光速で移動することによって得られるエネルギーなので、そのまま閉じ込めることが不可能なのだ[1]。だから電気エネルギーを別なエネルギー(位置、運動、静電、磁気、化学)の形に変えて貯めている。位置エネルギーを利用したのが揚水発電だ。運動エネルギーを利用したものはフライホイールで、これは停電対策や列車の制動エネルギーの貯蔵方法として古くからある。静電エネルギーとして貯蔵するのがキャパシタ、いわゆるコンデンサだ[1][2]。超電導電力貯蔵装置(SMES)なる磁気エネルギーで貯める方法も近年注目されている[2][3]。そして化学エネルギーとして貯蔵する方法がLiBに代表される電池、今回の本題だ。ただいずれもお金のように大量に長時間安定的に貯めることができないのが最大のネックである。これが大容量・高出力の電気エネルギーを必要とするEVや、発電量が天候に左右されてしまう太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの普及を妨げる要因の一つにもなっている。

スマホのLiB
昨年機種変したスマホのLiB

化学電池には一度電気を使い切ると使えなくなるものと、充電して何度でも使えるものとがある。前者は一次電池といって乾電池やボタン電池などがそれに当たる。以前に紹介した燃料電池(「燃料電池車のひみつ」「燃料電池車のしくみ」)も一次“電池”ではあるものの、化学エネルギーの貯蔵機というよりは、水素を燃料とした高効率の“発電機”といってもよい。そして後者が自動車や今や我々の日常生活に欠かせない携帯電話のバッテリーに代表される二次電池だ。自動車用二次電池としては、今でも補器類の電力源として使われている鉛蓄電池が最古参で、ニッケル水素電池(NiMH)は安全性が高いこともあってハイブリッド車の駆動用電池として使われる。ハイブリッドの“先駆車”プリウスも現行4代目では一部LiBも採用されているが、未だにニッケル水素は現役だ[4]。しかし吉野も含めた様々な研究者・技術者によるアイデアと努力のおかげで、軽くて小さい高性能のLiBが実用化され、広く使われるようになった。もちろんLiB以外の二次電池も多くの人が研究開発に携わっているが、「持続可能社会」への実現に挑戦する人たちの代表として彼らが受賞の栄に浴したのだと理解している。

『トコトンやさしい電気自動車の本』[2]によれば、主な化学電池の基本構造は図1のようになる。電気を集めて通電する正負極の集積体、電子の受け渡しに直接関与する活物質(正負極)、それらが電解液に浸されていて、微多孔膜で作られたセパレータは電池の正極と負極を電気的に絶縁するために使用される。表1は図1に対応する代表的な化学電池の構成物質を示している。電池は正極負極の間で電子が移動することで電流を発生させる装置であり(電流の向きと電子の流れの向きが真逆なのは、先人が単に定義を統一しなかっただけなのだ)、二次電池は正極と負極の活物質で別々に起こる酸化還元反応における電子のやり取りによって放電、または充電を行う。ここで化学が苦手な御仁にとっては学校を卒業して以来記憶から抹消したであろう“酸化還元反応”なる用語が登場する。

図1
図1.代表的な実用電池の構造(『トコトンやさしい電気自動車の本』より)

表1
表1.代表的な実用電池の構造(『トコトンやさしい電気自動車の本』より)

酸化とは文字通り物質が酸素と結びつくことをいい、還元とは逆に物質から酸素を失うことをいう[5][6]。以下の銅と酸素の化学式(1)で説明すると、

2Cu + O2 → 2CuO ・・・(1)

この反応はCu→CuO、O2→CuOの変化だから、銅は酸素原子を1個得ているので「酸化」、酸素分子は酸素原子を1個失っているので「還元」といえる。またこの反応を電気化学的に説明すると、

2Cu → 2Cu2 + 4e ・・・(2)
O2 + 4e → 2O2 ・・・(3)

(2)(3)式の両辺を足すと(1)式になるが、これらを眺めると銅が陽イオンになることを「酸化」、酸素分子が陰イオンになることを「還元」と同じ意味になることがわかる。つまり酸化還元反応は次のように定義することもできる。

酸化:e(電子)を失う(放出する)こと  
還元:e(電子)を得る(吸収する)こと

酸化還元反応の意味が“少し”わかったところで二次電池の充放電時における化学反応と電気特性を考えてみる。図2-(a)のように充電は正極から電子を抽出し(酸化)、負極に電子を与える(還元)化学反応によって負極側に電子が貯まれば充電完了。放電はその逆で正極に電子を与え(還元)、負極から電子を抽出する(酸化)化学反応である(図2-(b))。完全放電した電池内では、すでに電気化学反応が起こらない状態で電池内の物質が化学平衡状態を保っている。一次電池は充電方向の流れが起こらない不可逆反応か、反応が起こっていても高コストなど充電を行うメリットがない理由で捨てられているそうだ[7]。

図2-a 図2-b
図2.二次電池の充放電メカニズム[7]

まずはニッケル水素電池(以下NiMH)の場合で充放電のメカニズムを説明する[7]。表1のようにNiMHは正極活物質にニッケル酸化合物(NiOOH)、負極活物質に水素吸蔵合金=金属水素化物(通常MHで表す)を用いた場合とする(図3)。これを化学反応式で表現すると、

【充電時】(図3-(a))
正極(酸化):Ni(OH)2 + OH → NiOOH + H2O + e ・・・(4)
負極(還元):M + H2O + e → MH + OH ・・・(5)

【放電時】(図3-(b))
正極(還元):NiOOH + H2O + e → Ni(OH)2 + OH ・・・(6)
負極(酸化):MH + OH → M + H2O + e ・・・(7)

以上電池全体の反応を平衡式で書けば、
Ni(OH)2 + M ⇄ NiOOH + MH ・・・(8)

図3-a 図3-b
図3.ニッケル水素電池の充放電メカニズム[7]

次に昨年の主役リチウムイオン電池(LiB)の場合、正極活物質にコバルト酸リチウム(LiCoO2)、負極が黒鉛(C)の場合の反応で説明する(図4)[8][9]。化学反応式で表せば、

【充電時】
正極(酸化):LiCoO2 → Li1-xCoO2 + xLi + xe ・・・(9)
負極(還元):C6 + xLi + xe → LixC6 ・・・(10)

【放電時】
正極(還元):Li1-xCoO2 + xLi + xe → LiCoO2 ・・・(11)
負極(酸化):LixC6 → C6 + xLi + xe ・・・(12)

電池全体の反応を平衡式で書けば、
Li1-xCoO2 + LixC6 ⇄ LiCoO2 + C6(0<x<1) ・・・(13)

図4
図4.リチウムイオン電池の充放電メカニズム[8]

以上がNiMHやLiBなどの二次電池“内部”で起こっている充放電の電気化学的なメカニズムである。しかし、このLiBが数ある電池の中で科学界の栄誉を手にした理由は何か?

化学電池のメカニズムにイオンの働きは当たり前なのに何故わざわざリチウム“イオン”と名乗るのか前から気になっていた。元素記号周期表「水(H)兵(He)リー(Li)ベ(Be)ボ(B)ク(C)の(N)(O)ふ(F)ね(Ne)」で覚えたようにLi(リチウム)は3番目に軽い元素、最も軽い金属である(これがLiBのメリットに影響する)。また電子を放出してイオンになりたがる性質が強いのがLi。いわゆるイオン化傾向が強い金属である。今の受験生は「リッチ(Li)に貸そう(K)か(Ca)な(Na) ま(Mg)あ(Al)あ(Zn)て(Fe)に(Ni)すん(Sn)な(Pb) ひ(H2)ど(Cu)す(Hg)ぎる(Ag)借(Pt)金(Au)」の語呂合わせでイオン化傾向を暗記するようだけど、俺の頃も“リッチ”あったかな?「ひどすぎる借金」は何となく覚えているんだが…。正負極の活物質のイオン化傾向の差が起電力を生み、その差が大きいほど起電力(取り出せる電圧)は大きくなる訳だから、当然リチウムは極材として注目され、LiBが生まれる前にも負極に金属リチウムを用いた一次電池は存在した(現在でも銀塩写真カメラのストロボ電源に使われている[12])。イオンの出し入れ(電気化学的インターカレーションというらしい[13])に基づいて、70年代にその金属リチウムを電極に利用した二次電池を最初に開発したのが、今回共同受賞者の一人、NY州立大(当時はエクソン社)のウィッティンガム博士だ[14]。しかしリチウム金属二次電池はたくさんのエネルギーを蓄えられる一方で、高い反応性のあるリチウムを用いるため水や空気と触れると発火しやすいことが問題になっていた。そこで電解質に水を使わない非水系電解液と、リチウムが金属として析出することなく動作する負極材(炭素系材料)を用いることで、充放電を通じて金属リチウムが一切電極に生じない、安全性の高い電池LiBが開発され、それまでのリチウム金属電池と区別するために“イオン”の名前を付けたのだという[10][12]。

福井謙一
福井謙一博士
出典:産経新聞

このように金属リチウムの高い反応性が実用化の大きなネックになっていて、安全な二次電池のための様々な活物質が模索されていた時、吉野は1981年からLiBの研究をスタートさせる。1981年は当時京大教授だった福井謙一博士が日本人で初めてのノーベル化学賞を受賞した年。受賞理由は「化学反応過程の理論的研究」、いわゆる「フロンティア軌道理論」の提唱に対してである。当時大学に入ったばかりの私は、化学は苦手でもこの用語は頭にしっかりインプットされた。この理論は分子の中でどことどこの部位が反応しやすいか等を理論的に示したもので、それまでの化学が様々な反応現象を実験によって確認・検証する泥臭い学問だったものを、コンピューターシミュレーションなど理論計算によって反応予測が机上で可能になったことで発表当時の1952年、化学界に衝撃を与えた。孫弟子に当たる吉野のLiB研究もまさにこの理論を受け継いだものだった[12][15]。

白川英樹
白川英樹博士
出典:Chem-Station

吉野が研究をスタートさせる少し前、別な日本人が画期的な発見をする。電気を通すプラスチック、導電性ポリアセチレン(PA)を見つけたのだ(実験の失敗の産物であることは有名な話)。発見者の白川英樹博士もまた2000年のノーベル化学賞受賞者だ。吉野はこのPAがインターカレーションをもつ=二次電池に使えることに着目し、その高い起電力と金属リチウムの弱点であった空気や水との影響を受けにくい点に注目した。これは活物質として使えると。彼は負極材としてこの新しい物質の可能性を検討するのだが、これと対になる最適な正極材が見つからなかった。そんな時、1980年に発表されていた一つの論文に目が留った。LiCoO2が二次電池の正極に使えること、しかしカウンターの負極材が見つからないという今回同時受賞をしたオックスフォード大のグッドイナフ博士と水島博士の発表だった。それならPAが負極に最適やん!と、吉野は早速PAを負極、LiCoO2を正極で二次電池を試作すると予想通りうまくいった[12]。ところがこの新発想の二次電池の実用化に壁が立ちはだかる。

PAは安定性、特に高温における性能劣化など熱安定性に弱点があった。しかも致命的だったのはその比重が小さいこと。軽量化には有利としても、体積がかさばり小型化には不向きの材料だった。しかし諦めない吉野は、PAの分子構造の特徴がカーボン(炭素)材料に似ていることに気づく。そこで目を付けたのが炭素繊維。吉野が所属した旭化成では別の部署で炭素繊維を研究開発していたことも幸いした。こうして負極にVGCF(気相生成法炭素繊維)、正極にLiCoO2を用いることによって高い起電力を持ち、小型・軽量化に適した現在のLiBの原型が誕生した。1985年(昭和60年)のことである。ちなみにVGCFはカーボンナノチューブ(CNT)と親戚で、この分野でも信州大の遠藤守信博士や名城大の飯島澄男博士など日本人がノーベル賞級の貢献をしている[12]。

遠藤守信 飯島澄男
日本人研究者のバトンリレー(左:遠藤守信、右:飯島澄男)
出典:信州大学名城大学
日本人研究者のバトンリレーで実用化へとつながったのがLiBの技術なのだ。ただ世の中(市場)に出るまではまだ多くの課題が残っていた。それら課題解決の苦労や、最後まで諦めずLiBがIT社会のキラーコンテンツになると吉野が確信していた根拠は何なのか?については[12]に詳しい。

ところで電池の性能を表す重要な指標として、エネルギー密度とパワー(出力)密度がある。前者は電池の重量当たり(もしくは体積当たり)にどれくらいたくさんの電気エネルギーを蓄えられるかを表し、単位として一般的にWh/kg(又はWh/L)を用いる。EVではユーザーが最も気にする性能、すなわち1回の充電で走ることのできる距離(一充電走行距離)はこの性能に大きく左右されるので、エネルギー密度は高ければ高いほど良いことになる。後者は電池の重量当たりにどれくらいの最大出力(パワー)を出せるかを表す指標で、最大電力量をその電池の重量で割った値で定義し、単位はW/kgを用いる。自動車は発進や追い越し、登坂時に大きな力を必要とするので、EVにはパワー密度の高い電池が望まれるのだ。いずれも分母が重量なので軽いほど有利となる。最も軽い金属リチウムが注目される所以だ。しかし電池からできるだけ大きな電気エネルギーを取り出そうとしても電池の内部に抵抗があるために、これを取り出す時に速度が遅くなるのでパワーは小さくなる。電極の表面にイオンが着荷していればパワーは瞬時に取り出せるが、一方で蓄積できるエネルギーは減る。このように両者は二律背反の関係があるので、高いエネルギー密度と高いパワー(出力)密度を両立させるのが電池の大きな課題になる。図5はこの2つの関係性を示したラゴーニ線図と呼ばれるものだが(右上ほど高性能)、LiBではまだまだ内燃機関エンジンに適わないということがわかる。加えて、LiBが金属リチウム電池に対して格段に安全性が向上したとはいえ、電解液に可燃性の有機溶剤を用いるが故、可能性は低いとはいえまだ発熱・発火のリスクがなくなった訳ではない。

ラゴーニ線図
図5.ラゴーニ線図(『トコトンやさしい電気自動車の本』[2]より)

本書で紹介されている三菱自動車の水島製作所でもかつて、バッテリーパック組み立て工場で「i-MiEV」用リチウムイオン電池の火災が発生したり、「アウトランダーPHEV」でもリチウムイオン電池が発熱して一部損傷する不具合が見つかったことがある[17]。またテスラ社のEV「モデルX」火災事故も記憶に新しいし[18]、ボーイング787のLiBから発火したことによる航空機トラブルもあった(「理念・哲学なき行動(技術)は凶器である」)。一歩間違えば大惨事だ。そんなネガティブ情報はlこの「ひみつシリーズ」にはあまり出てこない(本書の初版は水島製作所火災後の2015年)。児童書とはいえ、またノーベル賞受賞というめでたいニュースであっても、負の側面はきちんと伝えるべきだと思う。ポジティブ、ネガティブ両面を公平に伝えて初めて教育やジャーナリズムの目的を果たすのだから。

バッテリー組立工場
三菱自動車水島製作所バッテリーパック組立工場(『電気で走るクルマのひみつ』より)

もちろん、LiBの発熱・発火に対する様々な安全策は取られているし[19]、ネックとなっていた液体の電解質に匹敵する固体材料の発見(これも日本人研究者)により、電極間のイオン移動を担う電解質に固体を使う「全固体電池」が現在次世代の本命とされている(固体であれば寒さで凍結する心配もなくなる)[20]。また、負極にZnやMgの卑金属、正極材を電池内に持たず大気中の酸素を使う「金属空気電池」も注目される。同じように正極剤に酸素、負極剤(燃料)に水素を用いる「燃料電池」も空気電池の一種と考えれば、金属空気電池は「金属の燃料電池」である。正極に固体酸化剤を用いた電池に比べると反応が遅いというデメリットはあるが、エネルギー密度が他の電池よりも大きくなることが期待されている[2]。

EV用LiB構造
自動車用リチウムイオン電池の構造([21][22][23]より筆者が再構成)

以上2回にわたって、EVを構成する主要な3要素、モーター、インバーター、バッテリーについて勉強した。何せ苦手な電気や化学の話なので端折ったり、理解不足のところは多々あると思う。まだまだ学業の修行が足りませぬ。自動運転といい、クルマはメカニズムを理解するのに何とも難儀なマシンになってきた。

三菱FOT・EV
三菱FOT・EV
出典:三菱自動車

最後に本書で紹介されている量産化EVのフロントランナーとなった三菱自動車のEV、PHEVに敬意を表し、これらのクルマについて少し言及しておく。三菱は「i-MiEV」の量販化に遡ること10年、1999年12月にEVによって24時間でどれだけ走れるかのチャレンジが行われた。FTO・EVを用い、同社名古屋製作所のテストコースにおいて、走行と急速充電とを繰り返す24時間耐久走行が行われ、2,142.3kmを走行した。この記録はギネスのワールドレコードに認定され、2013年時点で記録更新はされていないとのこと(調べてみたけどその後も現在に至るまで破られていないみたい)[24]。この経験・ノウハウがその後の「i-MiEV」、「アウトランダーPHEV」の開発、商品化に繋がったんだね。また本書でも少し触れていたが、EVの歴史についても別の機会に調べてみたいと思う。

「i-MiEV」は日産「リーフ」と同じピュアEVだが、「アウトランダーPHEV」はプラグインハイブリッド(PHVとかPHEVと略される)と呼ばれる形式。ハイブリッドカーには3つの方式がある[25][26]。「スプリットハイブリッド」、「シリーズハイブリッド」、「パラレルハイブリッド」の3種類だ。スプリット(分割)方式は「シリーズ・パラレル方式」とか「ストロングハイブリッド」とも呼ばれ、動力分割機構を設け、エンジンとモーターの両方を動力源として上手く使い分ける方式だ。発進や低速時にはモーター、速度が上がるとエンジンも併用して両方を効率よく使いながら走行する。トヨタのハイブリッドは基本この方式であるTHS(Toyota Hybrid System)を採用する。

スプリットハイブリット
図6.スプリットハイブリット方式[25]

シリーズ方式は基本的にはバッテリーの電気でモーターを回して走るが、エンジンは発電機としてバッテリーに電力を供給しながら走行する方式。走行中はバッテリー&モーターで走るためハイブリッドというよりはEVといってもよいだろう。似たような方式に「レンジエクステンダーEV」というものがある[27]。シリーズハイブリッドがエンジンによる発電を充電の主体としているのに対して、レンジエクステンダーEVは外部充電が充電の主体。普段の走行では前者はエンジンが回っているが、後者は基本回らずにあくまで補助的・緊急用。だからシリーズはエンジンが大パワー、バッテリーが小容量だが、レンジエクステンダーEVはその逆の特徴を持つ。日産のe-Powerはシリーズ方式の代表格で、レンジエクステンダーEVはBMWのi3などが採用している。

シリーズハイブリッド
図7.シリーズハイブリッド方式[25]

パラレル方式はエンジンとモーターの出力軸が同じで、発進時や加速時などパワーが必要なときにモーターがエンジンをサポートする「モーターアシスト式ガソリンエンジン車」ともいえる方式だ。ホンダのIMA(Integrated Motor Assist System)が有名だ。それぞれの長所短所は[25]を参照して欲しい。そしてプラグインハイブリッドは、各ハイブリッドシステムのバッテリーに外部充電できるものをいう。本書で何度も出てくる「アウトランダーPHEV」はベースがシリーズ方式だが、高速巡行時のみパラレル方式となるレンジエクステンダーEVとシリーズ方式の中間のようなハイブリッドだ[28]。前述のようにLiBを含むバッテリーのエネルギー密度、パワー密度の実用度が内燃機関に及ばない現状をみれば、今後EV側に振れていくとはいえ、まだまだハイブリッドに頼らざるを得ないだろう。補助金制度でEVバブルだった中国も、補助金が削減されると需要も減り、ハイブリッド車への補助拡大へ方向転換との報道もある[29]。

パラレルハイブリッド
図8.パラレルハイブリッド方式[25]

アウトランダーPHEVの走行モード
図9.アウトランダーPHEVの走行モード(『電気で走るクルマのひみつ』より)

ちなみにこの本は通常の流通ルートでは手に入らない非売品で、私は三菱自動車が日産傘下になった直後の本社ギャラリーに行って購入した。ここで販売されていることをネットで知ったのでね。今となっては確固たるEV戦略なきカルロス・ゴーンの拡大路線に利用されて気の毒だと思う。三菱グループが助けてくれていたらねえ。


あのSONYもEV参入?EVコンセプト『VISION-S』[30]
2020年は大手メーカーのEVが勢揃い[31].EV群雄割拠の時代へ突入.

グレタさんの言う通り、我々大人たちは利己主義で変化を好まず、子どもたちの未来を奪おうとしているのかもしれない。一方で、吉野博士らのように未来を救おうと日々チャレンジを続け、従来の常識を覆し、一歩一歩着実に成果を上げている大人たちもたくさんいる。地球温暖化説だって100%正しいかどうかは誰もわからないし、突然解決の糸口になるような大発見、ブレークスルーがあるかもしれない。常識を疑うことから科学技術は進歩をしてきたからだ。彼女も原始時代に戻れと言っている訳ではないだろうし、かなり末期的ではあるけれども、もう少し人類―今の大人と未来の大人たち―の英知を信じてみてもいいんじゃないか。

10年後は?
10年後の世界は?(『電気で走るクルマのひみつ』より)

グレタさんに叱って欲しい大人たち
グレタさんには脱炭素社会への貢献なんて口先だけで己の利しか考えていないこんな大人たちも叱って欲しい
出典:左からBisiness Journalマネー現代Business Journal





[参考・引用]
[1]電気を貯める方法とその仕組み 家庭用蓄電池のメリット・デメリット、自然でんき、SoftBankホームページ、2018年4月18日、
https://www.softbank.jp/energy/special/shizen-denki/column/vol-010/
[2]トコトンやさしい電気自動車の本 第2版、廣田幸嗣、日刊工業新聞社、2016
[3]超伝導電力貯蔵システム、新電力ネット、
https://pps-net.org/glossary/14727
[4]「4代目プリウス」の電池はなぜ2種類あるのか ニッケル水素だってまったく枯れていない、森口将之、東洋経済ONLINE、2015年11月22日、
https://toyokeizai.net/articles/-/93551
[5]第35章 酸化と還元、大阪教育大学 岡博昭のホームページ、
http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~hiroakio/2008/08ko-035.html
[6]酸化還元って何?、小玉信武、高校化学再入門、化学同人、2005
[7]充電・放電時に二次電池内部では何が起こっているか?、技術コラム、松定プレシジョン・ホームページ、
https://www.matsusada.co.jp/column/secondary-battery.html
[8]リチウムイオン電池の充電・放電反応、リチウムイオン電池の専門技術、Techs blog、2019年5月6日、
https://techs-blog.com/lib/redox/
[9]【電析とリチウムイオン電池の構造】正極より負極の方が一般的に大きい理由、電池の情報サイト、
https://kenkou888.com/category17/負極の方が正極より大きい理由.html
[10]リチウムイオン電池とは何か?その利点と欠点は?、マッド石村、BATTERIES.jp、2019年7月31日、
https://batteries.jp/lithium/6/
[11]イオン化傾向とは?覚え方も使い方もこれでバッチリ!、はぎー、受験のミカタ、
2018年2月22日、
https://juken-mikata.net/how-to/chemistry/ionization-tendency.html
[12]リチウムイオン電池が未来を拓く、吉野彰、シーエムシー出版、2016
[13]ノーベル化学賞受賞までの道のりと未来の産業革命 ―リチウムイオン電池の開発経緯とこれから、腰高直樹、サイエンスポータル、2019年11月1日、
https://scienceportal.jst.go.jp/columns/highlight/20191101_01.html
[14]祝ノーベル化学賞 吉野博士が語ったリチウムイオン電池の本当の凄さ、現代ビジネス、2019年10月9日、
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/67716
[15]福井謙一、Wikipedia、
https://ja.wikipedia.org/wiki/福井謙一
[16]電池のエネルギー密度と出力密度、feynman、最先端治療(がん・ガン・癌)と重粒子線治療、2019年1月8日、
https://ameblo.jp/feynman/entry-12429397199.html
[17]三菱、バッテリー損傷の原因を人為的ミスと特定、webCG、2013年4月24日、
https://www.webcg.net/articles/-/28351
[18]電気自動車時代に向けて、バッテリーその他の新たな安全対策は必要なのでしょうか、山本一郎、Yahoo JAPANニュース、2018年4月2日、
https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamotoichiro/20180402-00083468/
[19]吉野彰さんノーベル賞受賞!「リチウムイオン電池」はどこがすごい?、西田宗千佳、講談社ブルーバックス、2019年12月10日、
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69059
[20]「全固体電池」開発にしのぎ 次世代「本命」、近づく実用化、時事ドットコムニュース、2019年12月10日、
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019120900554&g=soc
[21]電池セル不具合の原因は検査工程で加わった2種類の衝撃、三菱自が調査報告、朴尚洙、MNOist、2013年4月25日、
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1304/25/news082.html
[22]電池セル不具合の「アウトランダーPHEV」がリコール届出、8月下旬には生産再開、朴尚洙、MNOist、2013年6月5日、
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1306/05/news025.html
[23]三菱自、リチウムイオンバッテリー不具合で関連EV・PHVを一時生産停止、土屋篤司、Response、2013年3月27日、
https://response.jp/article/2013/03/27/194588.html
[24]【EV】EVの歴史と現在〜三菱自動車の取り組み〜、GoGoEV、2013年12月27日、
https://ev.gogo.gs/news/detail/1388714366/
[25]シリーズハイブリッドとは何?ハイブリッド3種のメリット・デメリット&採用例まとめ、newcars、2016年11月2日、
https://newcars.jp/tech/hybrid-3-types/
[26]もはや常識?各社のハイブリッド・システムの違い、説明できる?、コージー林田、カーセンサー、2015年6月22日、
https://www.carsensor.net/contents/editor/category_1585/_30108.html
[27]シリーズハイブリッドとレンジエクステンダーEVの違いは?、newcars、2016年11月3日、
https://newcars.jp/tech/series-hybrid-range-extender-ev/
[28]三菱アウトランダーPHEV 2018年型に試乗 ほぼEV、現実的に未来しめす、AUTOCAR JAPAN、2018年9月10日、
https://www.autocar.jp/firstdrives/2018/09/10/314696/
[29]コラム:中国が新エネ車政策の路線変更、ハイブリッドに追い風、Katrina Hamlin、ロイター、
https://jp.reuters.com/article/ev-china-breakingviews-idJPKBN1Z60EU
[30]ソニーがクルマを発表|初の試作EVはエンタメ要素てんこ盛り、MoTA、2020年1月7日、
https://autoc-one.jp/news/5005930/
[31]2020年は大手メーカーによるEVが勢揃いする:いま注目すべき10の電気自動車、JEREMY WHITE、WIRED、2020年1月4日、
https://wired.jp/2020/01/04/electric-cars-2020/
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