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楽しいクルマ絵本の世界/エンスーのためだけじゃないクルマ絵本ライブラリー

奥克彦という人

Posted by papayoyo on   8 comments   0 trackback

奥克彦という人

いよいよ始まったね、アジア初開催のラグビーW杯。先週の金曜日、開会式の時間には帰宅していたんだけど、疲れていたので飯食ったらそのまま寝ちゃって…開幕戦の日本-ロシア戦を見逃してしまった。でも勝利のスタートで良かったっㇲ。大会直前まで今一つ盛り上がりに欠けるのでは?と心配したが、始まってみればどの試合も満員だし(日本戦以外のチケット買えるんじゃないかと思ったが甘かったw)、競技場はどこも立派で大会の雰囲気もいい感じ。日本も世界ランク10位だ9位だと、昭和の日本ラグビーを知るおじさんにとってこのラグビー環境の変化は夢のようだ。その翌日はフランス-アルゼンチン戦を観たけど力が拮抗していて面白かった。息子はフランス代表ラ・ブルーのユニフォームがカッケーと。フレンチ野郎のセンスの良さは相変わらずだ。夜はいきなりの好カード、4年前にエディ・ジャパンが歴史的な大勝利を収めた強豪南アフリカ“スプリングボクス”とニュージーランド“オールブラックス”の試合を観ようと思っていたんだが、その前に横浜・横須賀市民にとっては大事なDeNA-巨人戦が気になってね。9回表のジャイアンツの攻撃が終わったら(DeNAが勝利したら)チャンネル変えましょと思っていたらあのまさかの屈辱の結末で(涙)。結局南ア-NZ戦ライブで見られんかったやないか。2日前の7点差大逆転劇も、その日9回ピンチで梶谷のスーパーファインキャッチもすべて台無しにしおって、どアホ(怒)。まあ2位確定でCSには出られることが決まったけどね。そのすったもんだの日の朝の報道番組で、今回のW杯招致の真の立役者と言われる故・奥克彦氏の特集[1]をやっていて最後まで見入ってしまった。


奥克彦
奥克彦大使
出典:Godfrey’s Blog

奥克彦さんの名前を憶えているだろうか。2003年に当時駐英国大使館員としてイラク戦争後のイラク復興と人道支援に奔走していた奥参事官(当時)と駐イラク大使館員・井ノ上正盛・三等書記官(当時)、イラク人運転手の3名がイラク北部・ティクリート近郊を日本大使館車両で移動中、何者かによってまるで狙い撃ちのような銃撃を受け殉職死した事件[2]。海外で人道的復興支援に携わる外交官が襲撃された衝撃も大きかったが、井ノ上氏は母校のずっと若い後輩だったこともあってとても記憶に残っている。奥氏がイラク赴任中、激務の中で外務省HPから発信し続けた「イラク便り」は、襲撃を受けた2日前の11月27日付、皮肉にも「感謝祭とラマダン明けの休み」の寄稿が絶筆となった。本件はまだ犯人も特定できていない未解決事件だが、ブッシュJr.の大統領時代に始めたイラク戦争も「大義」自体が疑われた“有志連合”(最近もどこかで聞く言葉だよね)による戦争だったため、この事件すら一部で陰謀説も囁かれるが、ここでは奥氏ら主にラグビーに関わる事実のみに留める。

イラクにて、井ノ上書記官と
イラクにて、奥大使(左)と井ノ上書記官(右)
出典:早稲田大学蹴球部

奥(以下敬称略)は外交官となる前、将来の桜のジャージ候補として嘱望された名ラガーマンでもあった。彼は兵庫県立伊丹高校入学後、幼馴染の先輩に誘われてラグビーを始める。当時は弱小チームだったそうだが、奥の類稀なセンスと努力もあって2年生の時に花園出場(出られちゃうところがスゴい)、3年次にはキャプテンも務める。一浪後にラグビーの名門早稲田に進学してラグビー部に入部し、あの宿沢広朗の指導を受ける。180cmを超える大型フルバックの奥は、名将、元早大ラグビー部監督(当時)・大西鐵之祐をして「将来、日本代表になれる逸材」と言わしめた。奥の同期で日本代表も務めた奥脇教の目にもその才能は際立っていたという。しかし彼は2年生のとき「本日で山を下りたい」と退部を申し出、周囲も驚く外交官の道を選ぶ。葛藤の末の決断だったようだ。彼をラグビーの道へ誘った先輩・阪本真一氏によれば、高校生の頃から外交官を目指していたという。そして猛勉強の末、早大在学中に超難関の外務公務員採用上級試験に合格した[1][3]。

オックスフォード時代の奥氏
オックスフォード時代の奥氏
出典:ytv

‘81年に外務省に入省した奥は留学先のオックスフォード大で再び「楕円球」への想いが蘇る。[4]によれば、一年に一度のケンブリッジ大学とオックスフォード大学とのスポーツ定期戦に選抜され出場すると、「ブルー」の称号が選手に与えられそうだ。種目別に同大学全体の中から選ばれた精鋭は、世界トップレベルの大学で文武両道を成し遂げたエリート中のエリートに贈られる称号で英国社会において尊敬の対象であり、ケンブリッジ・オックスフォード大学の各学部やカレッジはもちろん、政財界やアカデミックの分野でもグローバルなネットワークを持つことになる(後年、そのネットワークが彼に災いをもたらしたのかもしれないが)。奥はオックスフォードでもラグビー部のレギュラーとなり、日本人で初めてこの「ブルー」の称号を得た。その後は外交官の立場から日本ラグビーをサポートしようと考えた。その最大の夢がラグビーW杯の日本招致だった。当時日本ラグビー協会会長でもあり、大学・ラグビー部の大先輩でもあった森喜朗にも何度と招致への協力を求めた。奥は英国でW杯招致の運動をするから赴任させてくれと頼んだという。外務省に話を通し、彼を英国に赴任させたのは過ちだったと森は悔恨する。だからなんとしても奥のためにW杯は取らなければと思ったそうだ[5]。(これだけ読むと森元首相、本当はいい人なんか?と思ってしまうw)

イラク赴任中の奥克彦
中東にラグビーのたねを蒔いていたら…
出典:朝日新聞

世界各国のラグビー競技人口を調べると、アジアもそうだけど、サッカーに比べてイスラム圏の国々の存在感が非常に薄い[6]。長年頑なにアマチュアリズムを遵守し(アマ=ジェントルマン、プロ=労働者という考え方の中で生まれ育ったラグビーの歴史的背景を知るとなんと尊大なスポーツなのかという気もするが[7])、身体的ダメージの大きさから敬遠されがちなラグビーゆえにグローバルな普及がなかなか進まないのだろうが、代表チームに限ってみればグローバリゼーションはマインドセットの面も含めてどのチームスポーツよりも進んでいると思う。日本代表と言っても外国人ばかりじゃないのと冷めたコメントをする人もいるけど、ラグビーでは代表選手に外国籍は当たり前で「ある国の代表戦に1試合でも出場すると、原則的に他国のジャージを着ることはできない」というレギュレーションの上で、母国代表の勧誘も断って桜のジャージを着る選手の覚悟を知れば[8]、そんな批判は的外れだとわかる(かな?)。企業活動だって21世紀の今や、いちいち国籍や上下関係にこだわっていたら何も新しいものは生まれないし企業存続も危うい。それこそ一つの目標に向かって“One for all, All for one”は同じなんだよね。もし奥が生きていればイラクの地にもラグビーのたねを巻き、また今とは違うラグビーのグローバル化が見られたかもしれない。

快勝の初戦、日本vsロシア
快勝の初戦、日本vsロシア
出典:All About NEWS

日曜日に日本代表と同じプール(1次リーグ戦グループ)の強豪国アイルランド-スコットランド戦をライブ放送で観た。圧勝したアイルランドは世界ランク1位(日曜時点)も納得の強さで、惨敗したスコットランドでさえ前回大会では日本が10-45で大敗している相手だ。もう見るからに闘牛か熊並みの屈強な男たちの集団で、アイルランドもスコットランドも一切手抜きなしのガチンコ勝負。対戦後の選手たちは血だらけの満身創痍だった。こんなやつらに日本代表は勝てるのだろうかと心配になったが、よう南アに勝てたなと改めて彼らをリスペクトすることになった。こんな死闘を繰り広げた相手でもホイッスルが鳴ればノーサイド。勝っても負けても最後は相手を称える。別のラグビー特番を見ていたら、世界強豪国の名プレイヤーたちが口を揃えて言っていたことが、ラグビーにおける相手を「リスペクトする精神」[9]。南ア戦に勝ってはしゃいだ日本チームの行動を恥じたと語る五郎丸選手の真っ直ぐなコメントが興味深かった。大学時代の友人にもラガーマンが何人か居たが(山師養成所は頭脳派よりも肉体派が多いのでw)、皆気持ちのいい連中だった。

自己の利益と保身に走る企業経営者の不祥事とか、「島を戦争で奪還」といった軽々な発言(政治家は交渉で戦え)、もはや修復不能の日韓関係等々、それだけではない世界各地で広がる利己主義、排外主義の蔓延。今の日本や世界が抱える課題解決に必要なのはラグビーの精神なのかもしれんね。そういうタイミングでラグビーW杯が日本で開催されるのは偶然ではない気がする。

「できないって言うな!やろう!」
「できないって言うな!まず動け!」
「今やらなければいつやるんだ」
「今に精一杯死力を尽くせ」
奥さんの特番で紹介された彼の一言ひと言が、ラグビー精神に乏しい私の心に痛烈に刺さったよ。番組を見終わって、しばらく立てなかった。この後にDeNAを巨人を糞呼ばわりしてたんだから「リスペクト精神」の欠片もない俺(笑)。

奥克彦、そして平尾誠二。一番いなきゃいけなかったこの二人が今大会に不在なこと、つくづく残念に思う。

ラグビー日本代表チップス1
コンビニでこんなもん見つけたんだ.ミーハーな俺はすぐ買った.
ラグビー日本代表チップス2
で家に帰って食おうとしたら後ろに何か…おおーっ、昭和のおっさんには懐かしい選手カード付きやん!
選手カード
韓国出身のプロップ具智元と日本のキーマン、スタンドオフ田村優.

頑張れやー




[参考・引用]
[1]特集01“日本を想い、イラクを翔けた” ラガー外交官・奥克彦の生涯、ウェークアップ+、よみうりテレビ、2019年9月21日、
https://www.ytv.co.jp/wakeup/special.php
[2]イラク日本人外交官射殺事件、Wikipedia、
https://ja.wikipedia.org/wiki/イラク日本人外交官射殺事件
[3]奥克彦さんを偲んで、早稲田大学ラグビー蹴球部、2003年12月10日、
https://www.wasedarugby.com/topics_detail/id=477
[4]「ブルーBlue」とは?、BlueBridge Education、
http://jp.bbegroup.co.uk/about-us/
[5]ラグビーW杯 つなげ 楕円球の未来…清宮克幸氏×森喜朗氏、読売新聞、2019年9月19日、
https://www.yomiuri.co.jp/rugbyworldcup/20190919-OYT1T50214/
[6]【2018年版】世界各国ラグビー競技人口。日本のラグビー競技率は世界でも最低水準、ラグビーHack、2016年9月28日、
https://rugbyhack.com/2016/09/28/population/
[7]スポーツにおけるグローバリゼーションーラグビーフットボールにおけるグローバル化の現状―、野々村 博・岡本昌夫・福井孝明、大阪経大論集、p29-45、第55巻第6号、2005年3月、
http://www.i-repository.net/il/user_contents/02/G0000031Repository/repository/keidaironshu_055_006_029-046.pdf
[8]ラグビー国別代表に見られる、[先進的グローバリゼーション]の考察。、Sanchoz Rugby
、2015年9月20日、
http://sanchoz.top/prop/new-globalization/
[9]ラガーマンが胸に宿す「リスペクトの精神」、戸塚啓、リコー・ホームページ、
https://jp.ricoh.com/about/empowering-digital-workplaces/rugby-workstyle/column/181009_02/
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Comment

SDTM says... "9/28の試合が一番きになる"
★ がんばれ!日本!!
2019.09.27 05:48 | URL | #/ZyVyp1I [edit]
papayoyo says... "Re: 9/28の試合が一番きになる"
> ★ がんばれ!日本!!
さて、どうなりますやら。
2019.09.27 17:57 | URL | #- [edit]
SDTM says... "漸く落ち着きました、、"
☆ WCJ2019、まだ終わっていませんが、JAPANの試合を
  含めて、10試合は見たでしょうか、RUGBY三昧でした。
  ベスト8まで上り詰めたJAPANを称えたいです。
2019.10.23 02:06 | URL | #/ZyVyp1I [edit]
papayoyo says... "Re: 漸く落ち着きました、、"
父がとうとう旅立ちました。
葬儀の日、福岡ではちょうど福岡ドームでホークスが楽天とのCS戦で勝利の後、
夜は博多駅前でサモア戦のパブリックビューイングで大騒ぎでした。
父の告別式を終えた後、駅前で家族と慰労会だったのですが外は大盛り上がり。
街中でホークスのシャツの上にラガーシャツ着たハシゴ観戦者?を家族は見たとかw
飄々と冗談を言う親父の最後は湿っぽくしたくなったですし(天気もよかったです)、
祭り好きの博多らしく送り出せたかなと思います。
先日は平尾の命日にベスト4をと期待しましたが、彼も「ラグビーはそんなに甘くないねん」と天国で笑っているでしょう。
お世辞でも海外は「日本はティア1」と言ってくれますが、南アクラスに連勝、もしくは常に競り合いが出来て初めて、
ティア1の仲間入りなのでしょう。まあティア1.5くらいにはなったのかな。
でも昭和の日本ラグビーを知っているおじさんからすれば、
日本でWカップ、しかも強豪をなぎ倒して日本が全勝でベスト8なんて忘れられない令和元年となりました。
準々決勝はすべてテレビで観ましたが、やはり英連邦勢が残りましたね。
それも南北半球2チームずつ。欧州の中ではフランスに注目していて、負けはしましたが試合は超絶に面白かった。
まだまだ目の離せない試合が続きます。NZが順当なのでしょうが意外にイングランド来るかも。
お近くの調布のスタジアムには行かれていないのですか?

2019.10.23 21:02 | URL | #- [edit]
SDTM says... "味の素スタジアム"
☆ 秩父宮、旧国立競技場に出向いたことがありますが、
  なかなかスタンドからだと試合の細部が見れないのですね。
  妻が残念ながら、大騒ぎする雰囲気に馴染めないこともあり、
  味の素スタジアム、未体験ゾーンです。

  お父上の旅たち、お悔やみ申し上げます。
2019.10.27 20:14 | URL | #/ZyVyp1I [edit]
papayoyo says... "Re: 味の素スタジアム"
ひょっとするとイングランドが来るかもと書きましたが、本当にそうなりましたね。
恐るべしエディHC。南アにとっては4年前の屈辱の敗戦相手の知将がまた相手なので嫌でしょうね。

お心遣いいただきありがとうございます。
2019.10.29 00:05 | URL | #- [edit]
SDTM says... ""
☆ ご紹介いただいた「イラク便り」「日本を想い、イラクを翔けた―ラガー外交官・奥克彦の生涯 」を一気に読み終えました。奥さんは、SDTMとほぼ同世代ですね。立派!
2019.11.04 10:28 | URL | #/ZyVyp1I [edit]
papayoyo says... "Re: タイトルなし"
生きておられたら恐らく外務省幹部でいらしたでしょう。アンティパシーだらけの現在の国際情勢にノーサイド精神で課題解決に挑んでおられたと思います。少なくとも彼が種を蒔いた今回のW杯で、このグローバル社会での義(ただ)しい生き方について少し気づきを得たかもしれません。そう信じたいと思います。
2019.11.04 20:44 | URL | #- [edit]

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