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博多人形

博多人形

5月に老人ホームに入居したばかりの父がまた入院したため、先日福岡に帰省していた。今回は途中、私の家族にも久しぶりに顔を見せに来てもらった。父もかなり高齢だし、孫たちの顔でも見れば少しは元気になると思ってね。実家の方は相変わらず片付かない。古い昭和の遺物“百科事典”なんかもまだあって、親父に「もう使わんけん処分せんね?」と聞けば、「いや、なんか調べもんがあるときに役立つかもしれんから捨てるな」と非インターネット世代ならではの反応で、「かもしれん(かもしれない)」って絶対に“かも”はないのでいずれ処分するw。といってもガキの頃は読書キライだった俺も、百科事典を読むのは結構好きだったからパラパラとページをめくると懐かしさはあるのだけどね。そんな中でも厄介なのがお袋がやたらと購入していた人形類だ。玄関の靴棚や居間のサイドボードの上に鎮座するガラスケース入りの人形など昭和の家庭では良く見かけた光景だと思う。実家でも、特に地元伝統工芸品の博多人形が部屋じゅうの其処ここに置かれていた。食器や生活用品ならば引き取って使えるのだけど、ただ飾るだけ、スペースを取るだけの置物類、骨董類は趣味で集めている人以外、実家の片付けで途方に暮れる子ども世代にとっては処分に困る最大のアイテム。それが人形ならばポイと捨てる訳にもいかないし、買取に出そうにも最近は博多人形の需要がないらしく[1]、引き取り不可とか無料引き取り、最悪有料になってしまうようだ[2][3]。そんな博多人形の厳しい現状を示すことが最近ニュースになっていた[4]。

福岡市の陸の玄関口、JR博多駅の移転開業時(1963)以来、最後まで残っていた博多人形の老舗専門店「増屋」と「はくせん」の2店舗が6月、販売不振を理由に同時に閉店したのだという。ピーク時の山陽新幹線が開通した1975年には駅構内に人形店が10店ほどあったそうだが、その後は緩やかに減少し今回に至る。2011年には九州新幹線鹿児島ルート全線開通に伴い(「九州新幹線」参照)、博多駅も大規模リニューアルして駅構内の商業施設の来場者・売上高ともに上昇しているにも関わらずだ。まあ今どきの出張族や修学旅行生が土産に博多人形を買うとは思えんよなあ。伝統工芸品「博多人形」というブランドだけで商売ができた昭和の発想では令和時代は生き残れないだろう。工芸の技術を活かした別の商品や新しいカルチャーを創造するとか、ECも含め(もはやオンラインはビジネスの大前提)日本の伝統文化に興味のあるインバウンド向けにシフトするとか戦略を見直さない限り、今後も縮小傾向は続くだろうね(日韓関係の悪化によって、彼の国との関係も深い福岡のインバウンドにもかなり影響が出ていると地元のニュースでは報道されていた)。

新しい博多人形
出典:perfectworld.tokyo
新しい博多人形2
出典:よかなび
博多人形の新しいカタチも色々模索されているようだ(上:HAKATADOLLS、下:福かぶり猫).具体的なアイデアは思いつかないが、”人形”というカタチから発想を飛ばしてもよいのかもしれない.

そんなこんな考えながら実家の部屋を眺めていると、今まで気づかなかった博多人形に釘付となった。それが眼光鋭く、渋い台座の上にどしっと腰を据えた達磨大師の人形。実家に戻るといつも寝ていた部屋の古いオーディオ機器の上に埃を被って鎮座していた。童ものや美人ものといったこれまで私が持っていた“優しい”博多人形のイメージを覆すインパクトのある作品。こんな博多人形もあるんだと還暦近くにもなって新鮮な驚きだった。なんで今まで気づかなかったのだろう?達磨像の視線がやや斜め上だったので、目が合わなかったのか(笑)。

願力
武吉國明作「願力」

調べてみると、作者は武吉國明さん。現代名工の一人で博多人形商工業協同組合理事長でもある博多人形師としてかなり大物作家の作品だということがわかった[5][6]。作品名は眼力ならぬ「願力」。もちろん一点モノではなく、型取りの量産品。自分自身や周囲、世の中全般に不安な要素が立ち込める昨今なので、ちょうど良い縁起もの。自宅用に戴いてちゃんと飾ってあげることにした。他にもゴソゴソ探していると、妻があれば欲しいと言っていた女雛男雛の博多人形が出て来た。これまた武吉國明さんの作品で、これくらいこじんまりとした洒落た人形であれば、今どきの住宅事情でも置き場や保管場所にもそれほど困らないし、季節もののインテリアとしても重宝する。さてさて、他の我が家の趣味に合わない“大物”はどうしたもんだか・・・。

武吉國明
武吉國明
出典:博多人形 武吉工房

慶雛
武吉國明作「慶雛」

博多伝統文化が徐々に衰退するのを見るのは福岡県人として忍びないが、本当に良いもの、人々を魅了するものであれば必ず生き残っていくはずだ。歳を重ねてわかる良さというものもあるしね。ただ、伝統に胡坐をかいて常に進化してゆけないものは世の中から見捨てられる。自分の頭で新しい道を切り拓けない限り、時代の変化とともに消え去ってもそれは自然淘汰で仕方がないことだと思う。現在の自動車産業だって、50年先に今までの業態で残っているとも限らないのだから。またネットの時代なのだからグローバルにもっと魅力を発信することも必要だろう。福岡で生まれ育った私ですら博多人形のことをよく知らなかったのだから、世界では日本の地方都市の工芸品のことなんてほとんど知られていない。今度帰省する際には、武吉さんの「空吹き窯」でも尋ねてみるか。

[参考・引用]
[1]博多人形を売るなら大吉キッピーモール三田店へ。、買取専門店「大吉」キッピーモール三田店 店長ブログ、2016年11月19日、
http://www.kaitori-daikichi.jp/blog/archives/507656.html
[2]日本人形、西洋人形、ソフビなど人形の買取りはお任せください。、古いもの・リサイクル「大小堂」ホームページ、
http://daishodo.com/dool.html
[3]人形・郷土玩具の買取、無料引き取り、処分、コレクターズ、
https://korekutazu.com/purchase-doll.html
[4]博多人形店、博多駅から消える 「陸の玄関口」最後の2店舗が“同時”閉店 業界内外に衝撃、戸惑い、西日本新聞、2019年7月10日、
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/525940/
[5]Vol.49 「博多人形」 福岡県、吉田美穂、みらい図鑑、TOKYO FMホームページ、
https://www.tfm.co.jp/miraizukan/index.php?itemid=119307
[6]博多人形「空吹き窯」復活 「技術後世に」願い実る 福岡市・武吉さん、西日本新聞、2019年4月18日、
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/503537/
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[ 2019/08/16 01:13 ] Fukuoka/福岡 | TB(0) | CM(0)

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