あかいじどうしゃ よんまるさん

無骨なSUV」には実はもう一台紹介したいクルマの記事があったんだよ。それが本日、久しぶりにネタにするクルマの絵本『あかいじどうしゃ よんまるさん』(堀川 真・作、福音館書店こどものとも通巻615号)のモデルであるトヨタ・ランドクルーザー40系(通称よんまる)に関するものだ。

走行距離わずか8,473km! 新車同様に保存されていた1978年型トヨタ「ランドクルーザー」がオークションに出品中

たったの5マイルしか走っていない、鮮やかなグリーンの塗装もオリジナルのまま、錆なども一切ないほぼ工場出荷時の状態を保たれた1978年式トヨタ・ランクルFJ40が、中古車オークションサイト『Bring A Trailer』に出品されているという4/6付けの記事だ。

40年前のランクルがなぜこのような完全な状態で残っていたのか?カーペットの卸売をしていた最初のオーナーは、わずか1年足らずでクルマを倉庫に保管することを決めた。内側にカーペットを張った木枠を作ってこのランドクルーザーを収め、それを倉庫の壁に掲げ仕事のモチベーションにしていたという(クルマを壁に飾るって、イメージができないぞー)。そして、いつか壁から降ろし、このクルマで北米中の国立公園を訪れる計画を立てていた。しかしその夢を果たすことなく2000年に他界した。

Auction Land Cruiser FJ40 #1
エアコンだけは後付けらしいが、これはこれでプラントの設備みたいでカッコいい.

その後、このFJ40は男性の遺族によって、ランクルのレストアを手掛けることで有名なジョナサン・ワード氏に売却。二十数年ぶりに整備を受けたFJ40は、同氏の友人に売却されたが、再び買い手を求め、このオークションに出品されたというのがコトの経緯である。

Auction Land Cruiser FJ40 #2
鉄板むき出しのインパネに昔ながらのスイッチ類.ダッシュボードのシボ加工の品質や風合いがどうのとか無関係.

オークションでは8,000ドル(約86万円)からスタートし、9,000ドル(約96万円)という低い金額の入札があったが、それから8万4,000ドル(約900万円)と一気に高騰した。日本時間で4月7日の午前4時にオークションは終了し、10万ドル(約1,072万円)という高値で落札された。それにしても色といい、カタチといい、いい味だしているよなあー、ヴィンテージよんまる。たまりません。

Land Cruiser FJ40
これぞプロダクト.掘り出し物のランクルFJ40.

オーナーの夢を叶えるためにこれだけ大切にされたランクル40系。同じクルマに対する愛情表現でも、こちらはとことん使い倒すことに深いランクル愛が伝わる絵本だ。

あかいじどうしゃ よんまるさん その1
ぽんこつよんまる(『あかいじどうしゃ よんまるさん』より)

絵本の“よんまるさん”は真っ赤な古びた一台だ。オーナーは農家を営む若い夫婦である。がらがらとうるさい(ディーゼル)エンジンは一発でかからず、強い風が吹くとボンネットが外れそうになる。雨漏りはするし、ボディにあいた穴をふさがないとカエルなどが室内に入り込んで来る始末。どれだけポンコツやねんというクルマだった。それでもこの夫婦、頑丈なエンジンで、どんな道でも走ってくれる“よんまるさん”がお気に入りだった。ゆっくりしか走れない“よんまるさん”は、フツーの道ではぴかぴかなクルマに追い抜かれちゃうけど、ダートな山道では、あっという間に軟弱なクルマたちを追い抜いてしまう頼もしいヤツだ。

あかいじどうしゃ よんまるさん その2
ちょいちょいリアルなクルマが登場する.青は日産・フェアレディZ(Z33)と白はシーマ(F50)かな?(『あかいじどうしゃ よんまるさん』より)
あかいじどうしゃ よんまるさん その4
3代目トヨタ・エスティマも(『あかいじどうしゃ よんまるさん』より)

そのうち夫婦には赤ちゃんができる。しかし2シーターの“よんまるさん”にはチャイルドシートを装着できる椅子がない。夫婦な仕方なく真新しいミニバンを購入した。お気に入りのクルマをライフステージの変化で手放さなければならないのは、多くの家族が経験していることだと思う。ただ農家なので、“よんまるさん”は畑の片隅で、農機具の倉庫代わりに使われるようになった。次第にそこはのねずみくんの家になった。

あかいじどうしゃ よんまるさん その3
ミニバンの車種がわからん(『あかいじどうしゃ よんまるさん』より)

ある日のこと、朽ち果てた“よんまるさん”を何やら物色するおじさんが現れた。「どうしてもこのクルマが欲しい」というそのおじさんに“よんまるさん”は譲り受けられた。ガレージに連れて行かれた“よんまるさん”は解体され、分解され、エンジンもオーバーホールされ、なんと真っ赤なトラックに生まれ変わった。その姿はまさにFJ45ピックアップトラック!(「新車同様にレストアされたトヨタ「ランドクルーザー FJ45」が、オークション・サイトで販売中」)。こうして新しい“よんまるさん”として、再び元気に働くことになったというお話。

あかいじどうしゃ よんまるさん その5
“よんまるさん”再生.右のトラックはいすゞ・エルフ(5代目)かな?軽トラはスバル・サンバー(4代目).(『あかいじどうしゃ よんまるさん』より)

作者の堀川真さんは1964年、北海道紋別市生まれの私と同世代。弘前大学で農学を、旭川で美術・木工を学んだ後、絵本やさし絵の仕事に関わる。絵本に『じかきむしのぶん』(福音館書店)、『しゅっぱつがたこんくん』(ベネッセコーポレーション)、『北海道わくわく地図えほん』(けんぶち絵本の里・びばからす賞 北海道新聞社)、さし絵に『筆箱の中の暗闇』(偕成社ワンダーランド)、『行け!シュバットマン』(福音館書店)などがある。子どもたちとのワークショップや、障がいを持った人たちへの療育にもたずさわっており、そうした経験をふまえて工作ガイド『かんたん手づくり おうちでおもちゃ―あかちゃんとあそぼう』(福音館書店)も上梓されている[1]。現在旭川市在住で、北海道立旭川美術館のキャラクター『ウッディ』、旭川市中央図書館のキャラクター『ブラリー』の作者でもある。小熊秀雄賞選考委員をはじめ、旭川市内各分野で活躍中。北海道日本ハムファイターズの読書推進全道キャンペーン「グラブを本に持ち替えて」の一環となる『もりのやきゅうチーム ふぁいたーず』(北海道新聞社)のさし絵も担当し、ファイターズファンにも知られた存在のようだ。あのショウヘイ・オオタニは、キリンのキャラクターで登場![2]

キリン ショウヘイ オオタニ
出典:北海道日本ハムファイターズ・オフシャルオンラインストア
出典:朝日新聞デジタル

そして、堀川さんは本当にこの絵本のようなおんぼろ“よんまるさん”に乗っていて、ボディの穴をふさいだというのも本当のお話[3]。本書を上梓された頃(2007)はまだ現役で活躍していたそうで(さすがに今は乗っておられないようですけど[4])、絵本と違って子どもが産まれても手放さなかった。もっとも奥さんと子どもさんが移動の際には、タクシーを使っていたそうだが。

堀川真
堀川真
出典:ラポラポラな日々

堀川さんをググっていると、ここ神奈川の湯河原で『堀川 真展』が開催されているではないか。『よんまるさん』の原画も展示されておる。って開催期間を見ると先月28日まで。あっちゃーっ、タッチの差で終わっとるがな[5][6]。横須賀の「うみべのえほんや」でもやってくれへんかなあ。

堀川真展
堀川真展[5]

さて、最初に登場したオークションの“よんまるさん”。1千万円の落札額は決して高くはないようだ。米国ではヴィンテージSUVがコレクターの間で人気を博していて、特に80年代前半までに製造されたランクルは注目されている。1963年に登場し、北米市場でもベストセラーになった“よんまる”の新品同様の個体に至っては、2015年の平均落札価格が1千万を超え、2016年には最高落札額が17万6千ドル(1,887万円)にもなった。これをきっかけにランドローバーやジープのヴィンテージSUV人気にも火がついたという。古い絵本など古書も含め、ヴィンテージものがマネーゲームの材料に使われるのは嫌だけど、本当のよんまるファンにとってはおカネを出してでも欲しいのだろう。立場は違うが、ボロボロになっても乗り続ける、修理してカタチを変えても使い続けるこの絵本の主人公たちや、作者・堀川さんのよんまる愛も同じなのだと思う。

そこまで人を虜にするこのクルマの魅力って何なのだろう。40年後、現行のプリウスやリーフが1千万の取引をされる価値を持っているだろうか。モーターやバッテリーをオーバーホールして、今と同じように使い続けられるだろうか。クルマに限らず、効率化で設計や製造の手法もコモディティー化(画一化)が進み、IT化で賞味期間も短くなって、すぐに使い捨てられる今どきのプロダクツとの付き合い方を考えさせられた一冊である。俺たちの生活って、本当に豊かになっているのかなあってね。






[参考・引用]
[1]堀川真、サンマーク出版、
https://www.sunmark.co.jp/author.php?csid=%E5%A0%80%E5%B7%9D%E3%80%80%E7%9C%9F
[2]堀川真さんのページ、こんにちは。あさひ印刷です。、
https://asahikawa-asahiinsatsu.jimdo.com/堀川-真さんのページ/
[3]よんまるさんは、今も元気です、堀川真、絵本のたのしみ、福音館書店月刊「こどものとも」615号、2007年8月号折り込みふろく
[4]「堀川真さんの工作パーティー」終わりました、ちいさなおうち。(札幌市西区西野)、2016年11月13日、
https://ameblo.jp/chi-ouchi/entry-12219152765.html
[5]堀川真展始まりました!、ギャラリー•カフェ 飛ぶ魚、2018年3月25日、
https://tobusakana.jimdo.com/2018/03/25/%E5%A0%80%E5%B7%9D%E7%9C%9F%E5%B1%95%E5%A7%8B%E3%81%BE%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F/
[6]楽しかった堀川真さんのトーク、ワークショップ、ギャラリー•カフェ 飛ぶ魚、2018年4月2日、
https://tobusakana.jimdo.com/2018/04/02/%E6%A5%BD%E3%81%97%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%9F%E5%A0%80%E5%B7%9D%E7%9C%9F%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%AE%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%AF-%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%97/
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