ミニキャブのレオン

昨秋に紹介した横須賀・追浜に誕生した絵本カフェ「カメリア」(「坂道、いや階(怪)段王国よこすか」)。日本児童文芸家協会正会員でもある店主がクルマの物語を書いているとブログで拝見して、年明けに再びお邪魔した。吾輩のクルマノエホン蔵書を抱えて。今日はその追浜発・クルマの絵本『ミニキャブのレオン』(いわなべ仙吉・文、いしわたこう・絵、関川日出雄・私家版)を紹介しよう。追浜といえば自動車の街、クルマ絵本では知る人ぞ知る『ダットさん』(教育画劇)があるけれども、ここにオッパマ・クルマ絵本が新たに加わった。

『ミニキャブのレオン』は昨年の11月から書き始めたそうで、一話完結のシリーズものになっている。私が遊びに行ったときは既にvol.20を超えていて、今じゃ31巻目に突入(3月5日時点)。記念すべき第一作目は「レオン救急用サイレンをもらう」である。当初は挿絵入りじゃなかったんだけど、出来上がった作品を販売しようと、最近同じくご近所に誕生した貸し工房&スタジオ「CRAFT MARKET」で開かれたフリマで出品したのだそうだ。この「CRAFT MARKET」は追浜にある平野材木店の材木置き場の一角を、クリエーターの発信基地の場として材木店3代目が提供し、その友人であるアーティストの石渡孝さんがリノベしたんだとか。フリマでその石渡さんの目にこの作品が止まり、イラスト制作を買って出たそうだ。こうして、まだ自主出版だけど、素敵な絵本に仕上がった。

ミニキャブのレオン初版本
『ミニキャブのレオン』初版本:この表紙のイラストは、いわなべさん作なのかな?
ミニキャブのレオン第2版
『ミニキャブのレオン』第2版:プロのアーティストによる挿絵が入ると、一気に絵本らしくなる.絵本製作、おもしれえ!

黄色いミニキャブのレオンは、自動車修理工場の社長パシリカさんの愛車である。パシリカさんの工場は小さいので、修理の依頼があるとレオンに乗って、お客さんの自宅へ出向いて作業するのだ。要するに出張自動車修理屋さん。会社の先輩から、出張タイヤ交換のビジネスはあると最近聞いたのだけど、出張自動車修理のビジネスモデルは、あまり聞いたことがないなあ。JAFは応急処置だしなあ。時にはレオン一人で出かけ、応急修理どころか完全に直しちゃうこともある頼もしい助手、いやパシリカさんの良き“相棒”なのである。

パシリカさんとレオン
パシリカさんとレオン

ある日二人、いや一人と一台が仕事に向かう途中のこと。
「あっ、危ない!」
自転車に乗った女の子が黒いクルマに轢かれそうになって転倒した。その黒いクルマはそのまま逃げてしまった。

パシリカさんは女の子を助けて、そのままレオンと病院に向かった。急いでいたので、病院の手前の角で黄色信号でも止まらずに交差点を曲がった。それを見ていた白バイがレオンを追っかけて来たので事情を話すと、その黒いクルマを追いかけて捕まえてくれた。信号無視のレオンも叱られたけど、被害者救助と犯人逮捕の協力で表彰されることになった。ご褒美に赤色灯とサイレンをもらったレオン。これで緊急自動車にもなる、自動車修理カーになったのだ。

「ミニキャブのレオン」シリーズ
『ミニキャブのレオン』シリーズ
出典:ミルキーステーション駅長のブログ(現・街角のカフェ『カメリア』の亭主)のブログ

私が店主の背中を押したのかもしれないし、クルマの絵本コレクターとしては地元発の絵本でもあるので手に入れないワケがない。まずはvol.12までを購入し、コレクションに加えさせていただいた。一作目は交通安全が一つの主題になっているが、他には電気自動車と旧車(ガソリン車)へのノスタルジーがテーマの「俺の時代、僕らの時代」(vol.9)で、クルマの価値の大変革という今の時代性にフォーカスしたり、「月とモグラとトンネルと」(vol.11)なんかは、ルネントマッパオと月ぼし団の『ダットさん』と重なり合う(店主は『ダットさん』をご存じなく、お店へ持っていた本書をとても興味深く読んでおられた)。やっぱり横須賀には月とトンネルが欠かせないね。

いしわたこうさんの原画
いしわたこうさんの原画
出典:ミルキーステーション駅長のブログ(現・街角のカフェ『カメリア』の亭主)のブログ

この2月、ピーク時には43万人を要した横須賀の人口が41年ぶりについに40万を割った[1][2]。人気者小泉進次郎君ご推薦で、友人・上地雄輔君の父上が新市長に変わっても、人口減に歯止めがかかっていない。高齢人口が多いので自然減は止められないため、若い人たちに横須賀に定住してもらえるよう街の魅力を引き出そうと市内外の人たちが色々知恵を出し合っているのだが、なかなか決定打が見つからない。私もこの状況に危機感を抱いている一人なのだが、拙ブログでも何度も書いているように、絵本を横須賀の魅力アイテムの一つとしてアピールできないかと考えている。横須賀市には神奈川県内では珍しい児童専門図書館が存在する。昨年亡くなった日本のファンタジー童話の第一人者、佐藤さとるさんの故郷は拙宅の隣町・逸見だ。裏山は彼の代表作の舞台、安針塚の森である。その佐藤作品にも欠かせない小人の国の話で有名なジョナサン・スイフト作『ガリバー旅行記』には、唯一実在する国・日本が描かれているが、ガリバーが上陸するザモスキーという土地が横須賀・観音崎であり、三浦按針こそガリバーのモデルであるという説もある[3]。また、たまにお邪魔する横須賀唯一の児童書専門店&カフェ「うみべのえほんや ツバメ号」は、今や絵本好きには人気のスポットになっている。その影響もあるのか、横須賀在住の絵本作家さんがここのところ注目株なのである。二葉在住の岡本よしろうさんは、『生きる』(福音館書店)で昨年の第10回MOE絵本屋さん大賞第6位になり表彰された[4]。私もちょいと知り合いなのでとても嬉しいニュースだった。汐入在住の長澤星さんも、『パグパグ3きょうだい』(鈴木出版)で私も時々アクセスするポータルサイト「絵本ナビ」が実施したえほん祭り2017で大賞を受賞している[5]。

岡本よしろう
岡本よしろうさん[6]
長澤星
長澤星さん[5]

先日、横須賀で「横須賀らしいまちづくり~谷戸を歩く~」をテーマに開かれた都市景観フォーラムを聴講したんだが、この地の負の遺産となりつつある谷戸の空き家をおしゃれにリノベして、若手の絵本作家やクリエーターさんに移り住んでもらい、この街がちょっとした絵本やアートの里になってくれると面白いんだけどねえ。定住しなくてもいい、アトリエやコミュセンとして、創造のためのセカンドスペースに使ってもらってもいいんだ。谷戸の佇まいは失われつつある日本の原風景、ホント様々なインスピレーションを与えてくれると思うのだよ。そして今回の主役、いわなべ仙吉さんも若くはないがw、横須賀絵本クリエーターの一人として。石渡さんも是非。

いわなべさんは、もう少し話もシンプルにまとめたいのだけどとおっしゃっていたが、イラストも写真で撮った原画を貼りつけただけなのでちゃんと印刷版画に起こして、文章も校正し直したら、もっともっと素晴らしい絵本になるに違いない!どこか出版を検討してみてくれないだろうか?オッパマからおもしろいことが生まれないかなあ。

横須賀の谷戸
横須賀の谷戸:マイナスな面もあるが、どこか物語性のある独特な雰囲気が良いのだよねえ

[参考・引用]
[1]横須賀市の人口、41年ぶり40万人割れ 若い世代の転入少なく、東京新聞、2018年2月14日、
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201802/CK2018021402000131.html
[2]横須賀市の人口40万人割れ、横須賀の頑張る社長ブログ、ウスイグループ・ホームページ、2018年2月18日、
http://www.usui-home.com/shacho-blog/2018/02/18/%E6%A8%AA%E9%A0%88%E8%B3%80%E5%B8%82%E3%81%AE%E4%BA%BA%E5%8F%A340%E、4%B8%87%E4%BA%BA%E5%89%B2%E3%82%8C/
[3]「ガリバー観音崎上陸」の逸話、タウンニュース横須賀版、2011年6月10日、
https://www.townnews.co.jp/0501/2011/06/10/107229.html
[4]2017年絵本屋さんにもっとも評価が高かった絵本は?『MOE』編集長コラム「大人が絵本を読むのって変ですか?」第5回、ダ・ヴィンチニュース、2017年12月28日、
https://ddnavi.com/column/426467/a/
[5]長澤星さんの最新刊「えほん祭り」投票で大賞に、タウンニュース横須賀版、2018年2月2日、
https://www.townnews.co.jp/0501/2018/02/02/418106.html
[6]岡本よしろうさん原画展 現代詩『生きる』絵本で表現、タウンニュース横須賀版、2014年9月5日、
http://www.townnews.co.jp/0501/2014/09/05/250388.html
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コメント

  1. 和田平助← | wLPMY1Nw

    日本のSOHOに

    お疲れ様です。
    なるほど、谷戸の空き家を開放して芸術家村を。
    確か坂のまち尾道でも同じような取り組みがあったかと記憶しております。
    まさしく日本のソーホーですね。

    歴史ロマン溢れ、山や海といった自然、さらに港町の情緒も兼ね備える横須賀は作者さんに与えるインスピレーションも有効に作用しそうですね。

    横須賀発のエホンがどんどん生まれてくるのを楽しみにしております。

    そしてワタシのクルマも登場させていただくとさらに感無量です。

    皆で盛り上げていけるといいですね。

    ( 18:23 [Edit] )

  2. papayoyo | -

    Re: 日本のSOHOに

    和田さん、先日はどうも。
    コメントありがとうございます。
    尾道もアートで町興しでしたかね。まだ行ったことはありませんが、大林監督の尾道三部作で憧れました。香川の直島も島全体をアートアイランドとして面白い試みをされています。
    横須賀は戦後日本ジャズ発信の地でもありましたし、音楽も一つの重要コンテンツだと思います。
    また、海軍が日本で初めて無線電信術を教育したのがこの地。その歴史を受け継いでいるのか横須賀にはNTTを始めとする通信技術のリサーチパークもありますし、自動車の街でもありますから、うまくコラボをすれば自動運転やコネクテッドカーの研究開発拠点としてのポテンシャルもあると思います。その潜在能力を活かして、ICT企業の誘致・集積を目指す「ヨコスカバレー」構想もあります。シリコンバレーはガレージ起業でしたが、ヨコスカバレーや空き家起業でしょうか。
    さらにこれからは海の資源開発の時代。私もその昔はそちら方面に進もうと思った時期もありましたが、日本は海洋資源大国になり得る可能性を秘めております。その前線基地と期待されるのが、追浜にある海洋研究開発機構、通称JAMSTECです。などなどテクノロジーでもおもしろい基盤はいっぱいあると思うのですよね。
    横須賀の人口減を嘆いたところで、日本そのものが人口減です。東京など一部を除いては、人口減少は避けようがない。ならばアートにせよ、テクノロジーにせよ、海外から人を集めてもよい訳です。元来、按針やペリーを受け入れてきた国際都市ですから、外国人に対する受容性も高い。
    ただ、これだけ素材があっても今一つパッとしない横須賀の弱点は、優れた総合プロデューサーがいないことだと思います。

    ベれG絵本。多摩美大卒のユーミンが作ってくれないかなあ・・・

    ( 23:52 )

  3. |

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    ( 12:45 )

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