FC2ブログ


Left and Right with ANT and BEE

今朝起きると「さぶっ!」。なんて夏休みだ。関東はこのところの雨続きで、この天候が20日まで続く予報だ。確かに酷暑はイヤだけど、「あぢぃ…」って言いながらアイス食うのが夏ってもんだろ。セミすら鳴いちゃいねえ。夏休みといえば子どもたちは虫捕りを愉しみにするもんだが、これじゃつまんないはず。来週以降は暑さも戻ってくるようだが、最近学校の夏休みは短いからなあ。とはいえ、その虫たちとの戯れにも十分注意を払う必要があるようだ。この夏、すっかり日本の危険昆虫になってしまったヒアリ。最近国内で世界初の猫を介した感染死亡例も報告されたマダニ。少し涼しくなってくると今度は凶暴化するスズメバチだ。一方海の向こうではGoogleの子会社が人為的に細菌に感染させた蚊2000万匹をカルフォルニア州に放ったらしい。これはジカ熱を媒介する既存生態系には存在しなかったネッタイシマカを撲滅するための策だという[1]。予期せぬ弊害はないというが誰がそれを保証する?ヒアリ対策にも同様な手法が用いられるかもしれないが、何か嫌だ。私が小学生の頃は、親も子も外で生き物観察するのに命の危険なんて考えもしなかった。毒ヘビとは知らずヤマカガシ狩りすらしていた。外来種生物もアメリカザリガニくらいだったかな。結局どれも、人間が極端に生活圏を広げていった結果なのだろう。昨今の異常気象も、(人間にとって)危険凶暴化する生物も、独善化する人類へ大自然からの報復なのかもしれない。さて、今宵のクルマノエホンは、その本来はほとんど危険な存在ではなかった身近なハチとアリがクラシックなクルマでドライブをするという楽しい絵本だ。英国では古くから人気の絵本“ANT and BEE”シリーズの一冊“Left and Right with ANT and BEE”(Angela Banner・作、Egmont UK Ltd.)を取り上げる。

英国の絵本事情は良く知らないのだが、この“ANT and BEE”というシリーズは、1950年から72年まで英国のEdmund Ward社、のちにKaye & Ward社から出版され、人気を博した絵本のようである。人気といっても英語圏ローカルのようで、和訳本は出版されていない。というのも、この絵本はそもそも作者Angela Bannerが息子に読み方を学ばせるために作った本[2]。だからA&Bの身近な生き物を主人公にしたのだろう。日本でABC絵本は英語教材以外なかなか使いづらい。昨日、横須賀の児童図書館で“ANT and BEE”や作者に関する情報を、数ある絵本や児童書の事典で調べてみたのだが、ほんのわずかAngela Bannerの記述があったくらい。インターネットで調べてみても出版社やコアなファンサイトくらいで情報は意外に少なかった[3]。Google先生にも“ANT and BEE”の項目はあるが、Angela Banner単独では引っかからない。もともと古い絵本だし、英語圏の中でも知る人ぞ知るって存在なのだろうか。でも、この絵本の創り方がとてもユニークで興味深い。

アリさん本は小さい
アリさん本は小さい

主人公がアリとハチらしく、本シリーズは旧版も新版も4inch(=10.2cm)×5inch(=12.7cm)の小さな絵本である。しかし中身は100頁前後と幼児絵本にしてはボリューム満載である。冒頭にこの絵本の使い方を作者が紹介している。本書はタイトルにあるように、幼児に右(みぎ)左(ひだり)の方向を教えるための絵本である。このANT and BEE”シリーズは全て、読者対象の子どもと一緒に読む絵本だと定義する。決して読み聞かせだけの絵本ではない。親やお兄さん、お姉さんが黒字部分を読んでお話をしてあげて、各絵本のテーマである赤字の言葉、本書では右(Right)、左(Left)の文字を学習者が声を出して読むという形式だ。

Left and Right with ANT and BEE その2
Left?Right?(”Left and Right with ANT and BEE”より)

本書のストーリーはこうだ。ある日、ハチがアリを乗せて図書館まで飛んで行こうとするところから始まる。と、アリがそれはダメだ、僕が君を背負って図書館まで行くと提案した。ところがアリの足は遅いし、図書館のある左ではなく右へ曲がってしまう。そっちはぬかるんだ道で、アリはハチを泥んこ道へ落してしまう。ハチはもう君に背負ってもらわなくていいよと断る。それでもどうしても自分の力でハチを図書館に連れていきたいアリは、今度は大きな葉っぱにハチを乗せて行くと言い出した。するとまたしても左ではなく右へ曲がってしまう。そこは石だらけの凸凹道。身体じゅう泥だらけ、こぶだらけになったハチはもうカンカン。お風呂に入り、怪我したところを包帯でぐるぐる巻きにしたハチは、もうこれ以上アリにおんぶされたくない、アリもハチと一緒に飛びたくないという始末。けれども怪我だらけのハチはこれ以上歩けなくなってしまった。どうしようかとその辺を歩いていたアリの目の前に、ガラクタ置き場にあった小さな古いじどうしゃ(T型フォード?)が現れた。これだ!

Left and Right with ANT and BEE その1
Off we go!(”Left and Right with ANT and BEE”より)

そこからアリとハチのドライブが始まった。でもやっぱり図書館のある左ではなく右へ曲がってしまう。するとそこは遊園地。遊園地で2匹は図書館のことも忘れて遊びに興じてしまう。そして再びじどうしゃで図書館を目指すが、またまたアリが間違えた右の道の先には…。以降、このお決まりのプロットで何度も何度も同じような話が繰り返される。そのたびにアリが左と右を間違えるのだ。この絵本一冊を読み終えれば、学習者はきっと左右の方向を間違えずに覚えるだろう。繰り返される文章も非常にリズミカルで、特に声を出して読むと楽しくなってくる。こんな日本語の絵本があっても良いと思うが、適度な語彙のレベルと分量なので日本の小中学生が英語学習に使う教材としても使える。

Left and Right with ANT and BEE その3
右へ曲がるとそこは…(”Left and Right with ANT and BEE”より)

“ANT and BEE”のオリジナル版は13作品。挿絵をBryan Wardが描いた。1980年代の後半から90年代の初期にTrafalgar Square出版から復刻されている。2013年に本書を含む新版がEgmont UK社から出版された。この新版では文章が改訂され、作者Angela Banner自らがイラストも描いている。しかし、Angela Banner没後、未発表作品であった本書と”Make a Million with Ant and Bee“の二作品が追加出版され、挿絵は別のイラストレーターによって描かれたようだ[2][4]。この絵本の挿絵を誰が描いたかは不明である。しかし、Angela Bannerのイラストだと言ってもわからないだろう。

”Ant and Bee, An Alphabetical Story for Tiny Tots“Edmund Ward版
シリーズ第1作”Ant and Bee, An Alphabetical Story for Tiny Tots“のEdmund Ward版

”Ant and Bee, An Alphabetical Story for Tiny Tots“Trafalgar Square版
こちらはTrafalgar Square社の復刻バージョン

”Ant and Bee, An Alphabetical Story for Tiny Tots“Egmont版
これがEgmont版。一見するとBryan WardとAngela Bannerの描くアリとハチに大して違いはないように見えるが、もう一匹のキャラクター、Kind Dogの描き方を比べると作画の違いがよくわかる。

Kind Dog:Bryan Ward画 Kind Dog:Angela Banner画
Kind Dog:左がBryan Ward画、右がAngela Banner画。Angelaの絵にも味があるが、Bryanの画力はやはり専門家のそれである。
出典(左):http://curiouspages.blogspot.jp/2010/04/more-and-more-ant-and-bee.html
出典(右):http://www.antandbee.co.uk/Kind_Dog.php


Angela Banner
Angela Banner
出典:http://www.lovereading4kids.co.uk/author/3341/Angela-Banner.html

Angela Banner、本名Angela Mary Maddison(旧姓Lincke)は1923年、当時英国の植民地であったインド・ボンベイで生まれた。1941年にLionel Maddison Parsonsという陸軍士官と結婚し、2児の母となる。2014年没[2][5][6]。ペンネームにBannerを使ったのは、作品のタイトルと主旨に合わせてA&Bのイニシャルにしたかったのだと思う。このバイオグラフィの参考情報にした英語圏のブロガー[5][6]でさえ、彼女の情報が少ないと嘆いておられるくらいだから、オリジナルのイラストレーター、Bryan Wardの情報は皆無である。2013年版で何故Bryan Wardの挿絵を使わずに全面改訂したのかも含め、謎多きシリーズである。

で、本作のイラストレーターは一体誰なんだ?



[参考・引用]
[1] Google子会社、細菌に感染した蚊2000万匹を市街地で放つ なぜ?、Sarah Buhr、HUFFPOST、2017年7月17日、
http://www.huffingtonpost.jp/techcrunch-japan/releasing-mosquitos-into-the-air_b_17507132.html
[2]Ant and Bee、Wikipedia、
https://en.wikipedia.org/wiki/Ant_and_Bee
[3]The unOfficial Ant & Bee Homepage、
http://www.apathyhouse.com/antnbee/
[4]Left and Right with Ant and Bee、Egmont Homepage、
https://www.egmont.co.uk/books/left-and-right-with-ant-and-bee/9781405279291
[5]Ant and Bee: The Mystery of the Disappearance of the Books and the Invisibility of Angela Banner、The Internet Wander/Wonder、2012年12月23日、
http://internetwondering.blogspot.jp/2012/12/ant-and-bee-mystery-of-their.html
[6]Angela Banner、THE LETTERPRESS PROJECT、2016年7月8日、
http://www.letterpressproject.co.uk/inspiring-young-readers/2016-07-08/angela-banner
スポンサーサイト


コメント

    コメントの投稿

    (コメントの編集・削除時に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)


    トラックバック

    Trackback URL
    Trackbacks


    最近の記事