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いやいやバスの3ばんくん

いやいやバスの3ばんくん

ろせんばす」に引き続き、バスものをもう一冊。今回紹介するのは『いやいやバスの3ばんくん』(砂田 弘・文、富永秀夫・絵、小峰書店)である。

主人公3ばんくんは、駅前広場の3番バース(乗り場)から出発する病院行きのバスだ。3ばんくんは病院に行く人でいつも満員。1日何回も同じ道を行ったり来たり。だからちょっぴり薬のにおいがする。2ばんくんは団地行き、4ばんくんは大学行き、5ばんくんは工場行き、そして6ばんくんは遊園地行き。みんな薬のにおいなんてしない。でも何といってもかっこいいのは黄色い観光バスの1ばんくん。ヘッドライトも4つだし、広い窓にゆったりしたシート。

得意げにマリンタワーと水族館を見物に行くことを話す1ばんくんが羨ましくって、とうとう自分に嫌気がさした3ばんくん。「あーあ、いやだ、いやだ、病院なんて。病院なんか無くなればいいのに。」と腹を立てた。

そんな雨のある日、イライラしながら走っていたことも原因なのだろう、脇道から飛び出したトラックとがしゃん、自動車の病院、修理工場行きとなった。幸いけが人もなく、3ばんくんはバンパーが凹んだだけ。一方トラックはドアとライトが壊れてしまった。痛々しいトラックを見て「悪いやつだけど、早く治るといいな。」と優しく気遣う3ばんくん。

病院の大切さに気づいた3ばんくんは、翌朝から元気で病院と駅前を行き来する。病院に行く乗客のことを心配し、自分の仕事に誇りを持つようになった3ばんくんの成長物語である。表紙に描かれたバンパーを曲げて、いかにも嬉しそうな3ばんくんの表情が素敵な絵本だ。

いやいやバスの3ばんくん その1
バンパーをへの字にいやいやバスになった3ばんくん(「いやいやバスの3ばんくん」より)

ところで主人公の3ばんくん、「ろせんばす」のモデルと違ってヘッドライトが2つしかない。車体の形もちょっと角ばっている。これは本書が初版発行された1980年にそれまでのモノコック構造から直線的なスケルトン構造の国内初のバスとして登場した日野自動車の中型バス、レインボー初代RJ型の特徴と共通点が多い。初代RJ系レインボーは丸型二灯式前照灯が特徴で、マニアからは「二つ目」と呼ばれていた[1]。元気になって町を走る3ばんくんの背景には東京タワーが描かれていることから都営バスがモデルではないかとも思われる。1ばんくんが見物に向かうマリンタワーと水族館は、我が在住エリア、横浜マリンタワーと三浦半島の油壺マリンパーク水族館がモデルではないだろうか?時代的には横浜・八景島シーパラダイスはまだ存在しない。などなど主人公や舞台に対する想像も膨らむが、おそらくモデルなんかない、作者の空想上のバスなのだろう。ただこれも何かの縁なので、日野レインボー初代RJ型バスと、バスの車体構造の変遷については次回でもう少し調べてみようと思う。

日野レインボー 二つ目
日野レインボー”二つ目”[1]

さて、この記事を読んで下さったお父さん、お母さんは、自分の仕事(家事・育児も含めて)にプライドをもっていますか?自信をもって自分の仕事を子供に説明できますか?結構即答でYESと答えられない人が多いのではないだろうか。「なんで毎日同じことの繰り返しなんだよ」「毎日毎日怒鳴られてばっかやし、ホンマやんなるわ」「あーっ、もう晩ごはんの支度なんてうんざり」てなボヤキがあちらこちらから聞こえてきそうだ。

かくいう私も決して自信をもって己の仕事を誇れるほど心豊かな者ではないが、このような不満が出てくるのは、仕事に自己の充足や成長を求めすぎている結果なのだろうか。或いは仕事は会社や家族への貢献・責務と堅苦しく考えすぎているのかもしれない。仕事はたいがい相手を伴うものだ。『自分のために働け!』(高橋裕二・著、講談社)というホンダ社員が書いた本があるが、仕事を通して自分の関係する相手がどれだけ満足してくれたか、喜んでくれたかを成果の尺度と捉えてみる。ちょっと視点を変えることで仕事への満足感、プライドが生まれてくる。結果的に会社も家族も自分も成長していくのだと思う。

「定型業務の繰り返しだけど、このデータがないと工務課の○○さんが困るんだよなあ」「上司には叱られてばかりだけど、営業先からは今日褒めてもらったな」「娘はおいしそうに食べてくれたわ」。ちょっとした相手の喜びや感謝でもそれが積もり積もれば大きなモチベーションとなる。何よりも相手が喜んでくれた顔、「ありがとう」の一言はうれしい。「人の“喜び”のために働く」本書を読んで得た感想である。

いやいやバスの3ばんくん その2
こんなにこやかな笑顔で仕事をしたいものだ(「いやいやバスの3ばんくん」より)

毎日オフィスで不機嫌なことの多い私。たくさんの人からにっこり「ありがとう」と言ってもらえるような仕事の仕方をしよう。もちろん私も笑顔で感謝の言葉を忘れずに。

[参考・引用]
[1]日野・レインボー、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E9%87%8E%E3%83%BB%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9C%E3%83%BC

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